こんにちは、KIYONOのエンジニアです。
先日、渋谷ストリームのGoogleオフィスで開催された「Data & AI Summit ‘25 Spring」に参加しました。本日は、そこで行われたセッションの概要についてご紹介いたします。業務の都合上、3つのセッションへの参加となりましたが、どれも大変興味深い内容でしたので、ぜひご一読いただければ幸いです。
行動ビックデータ×Geminiで叶える!分析フローの全自動化
まず始めに、株式会社unerry様による「行動ビックデータ×Geminiで叶える!分析フローの全自動化」のセッションに参加しました。
本セッションでは、分析フローの全自動化において活躍する、3つの魅力的なエージェント・モジュールが紹介されました。
提案骨子生成エージェント
まずご紹介したいのが、「提案前調査・プレ分析」の段階で強力な味方となる「提案骨子生成エージェント」です。
提案の骨子を作成する際、こんな課題に直面することがあると思います。
- 案件ごとに顧客の課題が異なり、的確な提案が難しい。
- 過去の案件資料はあっても、どれを参考にすべきか分からない。
- 社員によってツールへの習熟度がバラバラで、業務効率に差が出る。
こうした悩みを解決するのが、この提案骨子生成エージェントです。
デモでは、スーパーマーケットの施策の提案について述べられていました。このエージェントは過去の案件を参照するだけでなく、Google検索を活用して競合店舗の情報や曜日ごとのデータなど、その裏にある背景まで深く掘り下げて提案骨子を作成してくれます。
さらに、プロンプトを入力するだけで自動的にデータを抽出・可視化してくれるので、社内の誰もが簡単に活用できる点も大きなメリットです。
データインサイトエージェント
データ分析において、数字そのものだけでなく、その数字が持つ「意味合い」や「背景(コンテキスト)」を理解することは不可欠です。しかし、このコンテキストの把握こそが、時間と労力を要する作業でした。ここで活躍するのが、基本情報を自動で収集し、「数値結果の意味(コンテキスト)」を抽出するAIです。
このAIは、以下のプロセスで動きます。
- インプット(分析データマート): 既存の分析データに加えて、案件の「背景」「課題感」「仮説」といった情報を入力します。
- 情報収集と分析: AIが入力された情報と連携し、インターネット上のWEB情報(検索結果、SNS情報など)から関連データを自動で収集します。
- コンテキスト抽出とアウトプット: 収集した情報とRAG(Retrieval Augmented Generation)+プロンプトを組み合わせることで、単なる数値羅列ではなく、以下の様な
「意味」を伴った分析結果を導き出します。- 数値全体の解釈案
- 特異な数値の傾向
- 要因の仮説
- 判定理由
このAIの導入により、より本質的な考察や戦略立案に時間を費やすことができます。また、専門知識がない担当者でも、データの背景や意味を深く理解できるようになるため、データドリブンな意思決定が組織全体で促進されるでしょう。
レポートレビューモジュール
日々の業務で、レポートレビューに多くの時間を費やしている方も多いと思います。そんな課題を解決するのが、「レポートレビューモジュール」です。このモジュールは、事前に設計されたレビュー項目に基づき、生成AIがレポートを評価し、具体的なコメントを提供します。
人手によるレビューは、時間的コストがかかるだけでなく、評価者間のばらつきやヒューマンエラーが発生しやすいという課題がありました。しかし、このAIモジュールを活用すれば、事前に定義した評価基準に沿って、わずか20分程度で高精度なレビューを完了させることが可能です。
これにより、レビュー業務の効率化はもちろん、評価の均質化と品質向上を同時に実現し、本来注力すべきコア業務に集中できるようになります。
あらゆるデータが価値に変わる時代へ ー生成AIで深化するData Modernizationー
2つ目は電通デジタル様による「あらゆるデータが価値に変わる時代へ ー生成AIで深化するData Modernizationー」のセッションに参加しました。このセッションでは生成AIが登場したことにより、データ活用がどのように進化したのかということに重点を置かれて説明されていました。
データ化が難しかった動画の「意味」や「価値」
これまでの技術では、動画から得られる情報は表面的なものにとどまっていました。例えば、画像について説明する場合、
- 人が3人いる
- 背景は茶色
- 人が椅子に座っている
といった具合です。しかし、こういった情報は人間なら一目見てわかることで、本当に役立つ情報とは言えませんでした。
しかし、生成AIの登場により、この状況は劇的に変化しました。例えば、私たちが「この写真、うまく言葉にできないけど、なんだかエモいな」と感じたとします。この写真と説明を求めるプロンプトを入力するだけで、生成AIは「どのような点がエモいのか」を具体的に言語化してくれるのです。これはまさに、私たちの中に眠る暗黙知を瞬時に引き出し、明確にしてくれるようなものです。
さらに、この技術は画像だけでなく、動画にも応用できます。動画のどんな点が魅力的だったのか、どのようなメッセージが込められているのかまで、生成AIが詳細に解説してくれます。これは特に、プロモーション動画の企画や効果測定において、非常に強力なツールとなるでしょう。
生成AI時代のData Modernization:プロセスの自動化
日常業務において、手順書作成には多大な労力と時間を要することが一般的です。この課題に対し、生成AIが有効な解決策を提供します。
具体的には、作業中の様子を撮影した動画をGeminiに入力し、手順書への変換を指示することで、AIが自動的に詳細な手順書を作成します。これにより、従来の動画からの手作業による書き起こしや画像編集といった手間が大幅に削減されます。
さらに、生成AIは単に手順を文書化するだけでなく、作業の効率化に向けた具体的なアドバイスも提供します。動画の内容を分析し、よりスムーズな作業フローや改善点を提案することで、業務プロセスの最適化に貢献します。
このAI活用により、手順書作成の効率化はもちろん、業務全体の生産性向上が期待できます。
生成AIが再現する”知”:記録されていない価値へのアクセス
これまで、企業にとって活用が難しかったデータの一つに、「チャットローデータ」が挙げられます。膨大な量のテキスト情報の中に、顧客の生の声や潜在的なニーズが埋もれているにもかかわらず、その分析には多大な時間と専門知識が必要でした。このチャットローデータを画期的に活用した事例が紹介されていました。
どのようなものかというと、ユーザーペルソナ(ターゲット顧客像)と実際のチャットローデータを基に、RAGやファインチューニングを用いてGeminiを学習させます。これにより、まるで実際のユーザーの思考や反応を学習したかのようなアバターが生成されるのです。
この「アバター」は、単なる応答システムではありません。実際のユーザーがどのような言葉に反応し、どのような意図でメッセージを送るのかといった、リアルなコミュニケーションパターンを高い精度で再現することが期待できます。
この技術は、特にマーケティング施策のシミュレーションにおいて非常に有効です。例えば、新しいキャンペーンを打ち出す前に、このアバターと対話することで、顧客がどのように反応するか、どのような疑問を抱くかなどを事前に検証できます。これにより、施策の効果予測精度が向上し、リスクを低減しながら、より顧客に響くマーケティング戦略を立案することが可能になります。
データを収益源にしよう!データマネライズの概念とそれを支える技術
最後にご紹介するのは、Google cloud Japanの山本祥武様による「データを収益源にしよう!
データマネタイズの概念とそれを支える技術」です。「データは、21世紀の石油である」というキャッチーな言葉が繰り返し述べられており、データの活用法について深く考えさせられるものになりました。
データマネタイズとは
データマネタイズとは、「データを社外に提供することで金銭的価値を産む」ことです。
データマネタイズには「間接的収益化」と「直接的収益化」の2種類があります。
間接的収益化
間接的収益化とは、「データ提供を売上増のきっかけにする」ことです。
❶ 体験を良くし、製品をもっと利用したくする
ex 家庭用フィットネス機器
トレーニングに励んでいる人の動画を流すことで、モチベーションを向上させる。
❷ 追加の購買・課金を促す
ex 掃除機
掃除機のパフォーマンスに関するデータを提示し、「そろそろフィルターを交換しませんか?」と提案し、追加の購買を促す。
直接的収益化
直接的収益化とは、「対価(お金)をもらってデータを提供する」ことです。
❶ データ閲覧を有料化する
ex. スーパーマーケット
メーカー向けに日々の購買情報(POS情報)を販売する
❷ 段階的に課金をしていく
ex. ITコラボレーションツール
分析機能、インサイトレポートなどを課金に応じて段階的に提供していく
膨大なデータを瞬時に分析・可視化:BigQueryとLookerを活用したデモンストレーション
デモンストレーションでは、BigQueryとビジネスインテリジェンス(BI)ツールLookerの連携による、データマネタイズの可能性について言及していました。
デモではまず、18億行に及ぶ膨大なデータセットが用意されました。このデータに対して、BigQueryを実行したところ、日付ごとの集計をわずか2秒で処理が完了しました。この高速なデータ処理能力は、リアルタイムに近い迅速な意思決定を可能にする基盤となります。
続いて、この処理されたデータがLookerに連携され、視覚的なダッシュボードとして可視化される様子が紹介されました。Lookerは、複雑なデータも直感的なグラフや表で表現し、データの全体像を把握しやすくします。
さらに注目すべきは、可視化されたグラフや表に対して、自然言語でのコメントが自動で付与される機能です。これにより、データに不慣れな利用者でも、その数値が何を意味するのかを容易に理解できます。また、自然言語を用いたデータ探索機能も備わっており、ユーザーは直感的な操作で必要な情報を深く掘り下げることが可能です。
デモの中で、Lookerがデータマネタイズに適している点も強調されました。これは、企業が持つデータを収益源へと転換するための機能が充実していることを意味します。具体的な活用例として、自社ウェブページにLookerで作成したダッシュボードを組み込み、顧客やパートナー向けに情報を提供するケースが挙げられました。
また、Lookerの導入における大きなメリットとして、柔軟な権限管理機能が挙げられました。これにより、ユーザーごとに閲覧・操作できるデータの範囲を細かく設定できるため、セキュリティを確保しつつ、多様な利用シーンに対応できる運用が容易になります。
終わりに
本日のブログはいかがだったでしょうか。今回のサミットで改めて実感したのは、生成AIの進化のスピードは目覚ましいということです。その進歩は、私たちのビジネスや働き方を日々変化させています。この変化の波に乗り遅れないよう、私たち自身も常に新しい知識や技術を学び、適応していくことが大切考えております。
本日は以上です。
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